「のし(熨斗)」はつけたほうがいいの?」
義理の両親への結婚挨拶で手土産を選ぶとき、ふと疑問をに思ったことはありませんか?大人のマナーとして「贈答品にのしをつけるのは当たり前でしょ!?」という気もしますが、正しい意味や使い方を学校で学んだわけでもないので、不安もありますよね。
そこでこの記事では、礼儀作法やマナーの専門家のアドバイスを交えつつ、結婚挨拶の手土産にのしはいるのか?いらないのか?という論争に決着をつけたいと思います。
- 結婚挨拶の手土産に「のし」はつけないのが正解
- どうしても「のし」をつけたい場合の対応方法
- 水引の選び方や表書きの書き方のポイント
なお、結婚挨拶のための服装や手土産の準備、当日の流れと基本マナーをまとめて理解したい方は結婚挨拶の流れとマナーガイド!義理の両親に好印象を与える言葉づかいや振る舞いをシーン別に解説をご覧ください。
【結論】結婚挨拶の手土産にのしは不要!
まず結論からお伝えします。結婚挨拶の手土産にのしは不要です。
義理のご両親に初めてお会いする結婚挨拶の場面で手土産を用意するカップルは多いと思います。結婚挨拶の手土産を成功させる!親世代が本当に嬉しかった品物とは?で先輩カップルに実施したアンケートでは、約9割の方が手土産を用意したと回答しています。
結婚挨拶の手土産を用意するとき、いわゆる「どのような手土産を選んだらいいのか問題」というのはつきものですよね。そして、いざ手土産を選べたという段階で新たな浮かんでくるのが、「のしはつける?つけない?という疑問」ではないでしょうか。
結論は先ほどお伝えしたとおり、のしは不要ということになります。良かれと思って悩みに悩み抜いてのしをつけたにもかかわらず、意図せぬ誤解を招いてしまうケースもあるのです。続いて、のしが不要な理由を詳しくみていきましょう。
のしは不要!その理由は「お祝いの席ではないから」
皆さんは「のし(熨斗)とは?」と質問されて、スラスラと答えられるでしょうか?のしの存在を知らなかったという方はさすがにいらっしゃらなくても、この質問に答えられる方ばかりではないと思います。
のしの由来や意味は後半で詳しく解説しますが、元来、のしはお祝い事の贈答品につけるものです。一般に結婚挨拶の場面は結婚が決まっていない段階(ご両親に挨拶し、結婚を申し込む段階)ですので、まだお祝い事だとは言えません。したがって、結婚挨拶の手土産には、のしは不要ということになります。
結婚挨拶の手土産とのしの関係性について、礼儀作法やマナーに詳しい礼儀作法やマナーに詳しいNPO法人日本サービスマナー協会の石黒真実さんにもお話をうかがいました。
Q.結婚挨拶の手土産にのしは不要というのは本当ですか?
しかし、「結婚の挨拶=相手のご両親に結婚を認めていただく機会」であり、「手土産=挨拶の時間を作っていただいたお礼」です。そう考えると、【お祝い】を意味する熨斗をつけるのは気が早いと自然と感じられるのではないでしょうか。
このように、やはり熨斗は不要というのが正しい礼儀作法というわけです。結婚挨拶の手土産は、時間を作っていただいたご両親へのお礼や他所様のお宅へお邪魔する際の大人のマナーを示す物として持参する品です。ご両親への結婚挨拶は、お祝いの席ではないという基本を押さえれば、お祝いの品につけるのしは不適切であると理解いただけるかと思います。
ここでピンときた方もいらっしゃるかもしれません。そう、のしをつけて手土産を持参するということは、結婚挨拶をお祝いの場であると考えているも同然なのです。
つまり、すでに自分達の結婚が認められたものだという誤ったメッセージをご両親に伝えてしまうリスクがあるというわけですね。礼儀や作法に厳格なご両親の場合、「結婚を認めてもいないのにお祝いの品を送ってくるとは失礼なやつだ!」という誤解が生じる可能性があります。くれぐれもご注意ください。
みんなはどうしてる?のしをつけた?つけなかった?
ここまで読み進めていただいた皆さんの中には、「いきなり不要!と言われてみても、やっぱりのしをつけないのは不安だな…」と思う方も多いでしょう。目上の方にお渡しする手土産や贈り物の場合、どうしても不安になる気持ちは分かります。百貨店などで贈答品を購入すると、店員さんから「熨斗はいかがされますか?」というように気を配ってお声がけいただく場面が多いので無理もありません。
そこで、「周りのみんなはどうしているのか気になる!」という方のために、100名の先輩カップルさんに実施したアンケート調査の結果をご紹介します。このアンケート結果は結婚の挨拶の席に手土産を持参していたという男女の100名を対象としたものです。
結婚挨拶の手土産にのしをつけましたか?
先輩カップルへのアンケート結果を見ると、約7割がつけなかったと回答している一方で、14%の方は手土産にのしをつけたという結果になりました。のしをつけた方の中には「つけなくても大丈夫とは一応知ってはいたけれど、とりあえずつけておいた方が安心できたから」という声もありました。
結婚挨拶の手土産には熨斗は不要というのが正しいマナーですが、次のような理由からのしをつける決断を下したカップルもいるようです。
- のしが無いとなんとなく不安だったから
- のしをつけて激怒されることはないと思ったから
- ご両親がのしは必要と思っている気がしたから
のしをつけることは正しいマナーではないとはいえ、気持ちの面ではこれらの理由も理解できます。
手土産を受け取るご両親が、のしは不要ということを知らないケースはたしかにありそうですし、のしをつけたことでご両親から叱責を受けたという声が聞こえてこないのもまた事実です。現代ではのしに対して厳しく目を光らせているご両親は多くはないのかもしれません。
そうした背景を踏まえ、次のパートでは結婚挨拶の手土産にのしをつけたいと考えている方のための基礎知識について解説します。
手土産にのしをつけたい人のための基礎知識
このパートでは、お二人で相談した結果、「やっぱり熨斗(のし)をつけておこう」という決断を下した場合に知っておきたい基本的な知識や注意点について解説します。
- 熨斗の由来と意味を知ろう
- 慶事に使える水引のパターンを知ろう
- 外のしと内のしの違いを知ろう
- のし紙の書き方を知ろう
結婚挨拶に限らず、年齢を重ねるごとにのし紙をつけた品を贈る機会は増えてきます。この機会に熨斗に関する基本をマスターしておくとよいでしょう。
まずは基本!のしの由来や正しい意味とは?
この記事の前半で少し説明しましたが、まずはのしの由来や意味を理解しておきましょう。「熨斗とはどういうものですか?」と聞かれた場合、これから結婚を予定している若いお二人のみならず、ご両親の世代の方でも意外と答えに窮するという方は多いものです。
基本をおさらい!これが熨斗!
そもそも、熨斗ってどれ?という疑問もあります。のし紙全体をのしと誤解している方も多いようですが、正しくは熨斗と水引が描かれたものが、のし紙です。
続いて、熨斗って一体なんなの?どういう意味があるの?という疑問にお答えします。
熨斗(のし)の由来は、干しアワビ
上の図のように、熨斗は現代では紙に印字されているものがほとんどですが、あれは干しアワビを示す図柄です。「のし」とは、「のしアワビ」を略した言葉なのです。アワビは高級な海産物のあのアワビです。「のしアワビ」とは、細長く伸ばした干しアワビのことを指します。「のし」は「伸ばす」が語源です。
古来より日本にはお祝い事に海産物を贈る習慣があります。その中でもアワビは特別高級な縁起物として大変重宝されており、結婚などの慶事の贈答品にはアワビを伸ばした乾物(のし)を送る習慣があったのです。今日では、その習慣が紙飾りや印字された図柄として簡略化された形で残っているというわけです。
したがって、葬儀などの弔事にやり取りする品(香典返しなど)においては、熨斗の図柄が入ったのし紙を使用するのはご法度ということになります。
手土産に適した水引のパターン
のしについて理解したところで、もうひとつのポイントである水引について説明します。結婚挨拶の手土産にのし紙をつけるということは、水引を選ばなければいけないということです。場面に応じたふさわしい水引の基本を理解しておきましょう。
水引に関しても、近年はデザインやカラーのバリエーションは実に多彩になっており、選択肢が豊富です。「とりあえずおめでたいシーンに向いていそうな水引を選ぼう」と思って調べてみたけれど種類が多すぎて選べないという方も多いようです。
水引の選び方に自信が持てない方は、ここでご紹介する3種類の水引を覚えておくとひとまず安心です。あなた自身の結婚挨拶に限らず、知人の結婚祝いやお中元、お歳暮などにも使える知識ですのでしっかり身につけておきましょう。
紅白あわじ結び(一度きりのお祝いやご挨拶)
紅白あわじ結びは結婚挨拶の手土産にもっともふさわしい水引です。あわじ結びの特長は一度結ぶとほどくことが難しいという点。そこから転じて、一度きりのお祝い事や結婚挨拶や両家顔合わせの手土産に適切とされています。その他の結婚関連では、結婚する知人へのギフトにもこの紅白あわじ結びの水引がおすすめです。
紅白蝶結び(何度あっても良いお祝い)
紅白蝶結びを簡潔に表現すると、慶事に使いやすいオールマイティーな水引ということになります。何度でも結び目をすぐに結び直せるため、「これから何度あっても良いお礼やお祝い事」によく選ばれます。一般的にはお中元やお歳暮で目にする機会が多いと思います。もしも結婚挨拶の手土産に紅白蝶結びを用いる場合、「これから親しくなり、何度でも伺えるように」という思いを込めることになります。ただし、ベストなものは紅白あわじ結びです。
紅白結びきり(繰り返さない一度きりのお祝い)
蝶結びとは違い、結び切りは「固く結ばれ、簡単にはほどけない」という意味と願いを込めた水引です。今後繰り返さないようにという意味があり、結納や結婚祝い、内祝いに選んで正解な水引です。ただし、ポイントは結婚が決まっている状態で用いることです。したがって、結婚が決まっていない段階での両親への挨拶手土産には、ふさわしくないということになります。
ちなみに、紅白結びきりの水引を使う際は必ず10本のものを選んでください。このイラストでは5本の水引を紹介していますが、婚礼関連では10本のものが適切です。10本の水引は、5本をさらに2重にしていることから『両人、両家が手を結び合う』という意味があり、婚礼に適しているとされています。
水引についても、先ほどと同じくマナー講師の石黒さんにお話を伺いました。
どうしても熨斗をつけたい場合は「紅白あわじ結び」
【紅白あわじ結び】は結び目が複雑でほどけず、輪が互いに結ばれていることから「これから縁を結ぶ」という意味を込めて用いることができます。相手のご両親と初対面、初めてご実家を訪問するなどのケースが良いでしょう。
【紅白蝶結び】を選びたい方には、「これから親しくなり、何度でも伺えるように」という思いがあるかと感じます。ただ、蝶結びは婚礼に関する場面には不向きです。
【紅白結びきり】は結婚が決まっていないうちは違和感がありますが、すでに決まっている場合には「一生に一度のお祝いを込めた挨拶」としてつけるケースもあります。
マナーは単なる形ではなく、思いを言葉や行動に表すためのもの。熨斗をつけた理由や水引を選んだ理由を聞かれることはよほどないといえど、結婚挨拶の際の状況をふまえ目的を持って選びましょう。
慶事に使える水引はいくつかありますが、どうしても結婚挨拶の手土産にのしをつけたい場合には紅白あわじ結びを選ぶと良さそうです。
続いては、のし紙の表書きの書き方や外のしと内のしの違いについて解説します。
結婚挨拶の手土産にふさわしい表書きの書き方
パートナーのご両親への結婚挨拶で持参する手土産の場合、のし紙にもっとも適切な表書きは「御挨拶」です。たとえご両親と初対面でなくとも、あらためて結婚挨拶に伺った姿勢を示す書き方としておすすめします。
また、贈り主の名前として記載する内容は次のようにしてください。
- 新婦両親への品:田中 太郎(新郎の姓名)
- 新郎両親への品:山田 花子(新婦の姓名)
結婚挨拶の手土産に関しては、贈り主の名前は必ずしも書く必要はありません。本来不要である熨斗を付けていることに加え、贈り主の名前が書かれていると、やや堅苦しい印象を与えます。お名前は省略しても結構です。
外のしと内のしの違いは?どちらがおすすめ?
続いては、のし紙の付け方に関するマナーです。贈答品にのし紙をつける場合、「外のし」と「内のし」があります。包装紙の外側につけるものが「外のし」、内側につけるものが「内のし」です。両者の違いをかんたんに表現すると、贈り主側のメッセージの強弱の違い、受け取る側にとってのわかりやすさの違いということになります。
両者の違いについて詳しくはこのあと説明しますが、結婚挨拶の手土産につける場合には外のしがおすすめです。理由は、手土産を受け取ったご両親がひと目で「御挨拶」という表書きを目にすることができるからです。贈る側のメッセージを分かりやすく伝えるために外のしを選びましょう。
補足として、以下では外のしと内のしの使い分け方について解説しておきます。結婚前後は贈り物をやりとりする機会も増えますので、両者の基本的な使い方を理解しておくと良いでしょう。
外のしが適切な場面
さきほど説明したとおり、外のしは贈答品をお渡しするときに表書きが相手にわかりやすいという利点があります。そのため、贈り主の思いが伝わりやすく、贈り先にお目出度いことやお祝い事があった場合の贈答品に使うのが適切です。例えば、結婚祝いや出産祝いなどが適切な利用シーンとなります。
内のしが適切な場面
内のしは、包装紙の内側に付けるため外のしよりは控えめな付け方です。贈り主(あなた)にお目出度いことやお祝い事があった場合に使うのが適切とされています。あなた自身の慶事なので、主張を控えた内のしを使用するというわけです。主に、結婚や出産の内祝い(お返し)の品に用いられます。
彼女の両親と彼の両親でのしを使い分けるパターンもあり
彼女の両親への手土産には熨斗をつけず、彼の両親への手土産には「御挨拶」という熨斗をつける、というパターンもあるでしょう。彼のご両親に初めてお会いするので素直に御挨拶の気持ちを表現したい、という女性もいるかと思います。
このように熨斗をつけるかつけないか、挨拶する相手によって変えるパターンもありだと思います。必ずしも両家とも統一する必要がありません。
最後に、マナー講師の石黒さんに、のし以外に手土産で気をつけるべきポイントを教えてもらいました。
結婚挨拶の手土産では、品物選びやのしをつけるかどうかばかりが気になってしまいますが、包装紙や紙袋などにも配慮を欠かさないようにしたいものですね。
「1分で振り返る」この記事のまとめ
結婚挨拶の手土産にのしはいるか?いらないか?について解説してきました。この記事のポイントは次の通りです。
- 結婚挨拶の手土産に熨斗(のし)はいらない
- いらない理由は「お祝い事」ではないから
- つける場合はのしの意味や由来を理解しておく
- 水引は紅白あわじ結び、表書きは御挨拶が基本
- のし紙は外のしがおすすめ
この記事で解説した内容を参考に、大人として正しい手土産マナーを身につけ、本番にのぞんでくださいね。
また、結婚関連で使える熨斗や水引のパターンについては結婚祝いのお返しに使える「のし」と水引の選び方!で詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください。