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2021年9月の「デジタル庁」の新設を受け、日本では政治経済におけるデジタル化が本格的に動き始めました。その施策のひとつである「押印義務の廃止」は、私たちの生活に大きな変化をもたらす動きとして話題を集めています。
とはいえ「具体的に何が変わったの?」「どんな影響があるの?」という人も多いはず。この記事では、ハンコ廃止における法改正の概要に加えて押印が必須だった「婚姻届」への影響について詳しく解説します。細かい質問や疑問を解決するために、役所の担当者へインタビューした内容も必見です!
2021年9月以降の最新情報を分かりやすくまとめて解説していますので、ぜひチェックしてください。
- 2021年9月1日から婚姻届のすべての押印は不要(任意)
- 届出人と証人それぞれの自筆署名が大切
- 間違えた箇所によっては訂正印が求められるケースがある
- 印鑑廃止が進んでいても新姓印は作っておこう
今後は印鑑はいらない!?ハンコ廃止の法改正を解説
押印制度の廃止によって、各種手続きにはどのような変化が生じるのでしょうか。法改正の概要や、婚姻届への影響について、詳しく見ていきましょう。
印鑑にまつわる法改正の概要
印鑑にまつわる法改正は、2020年に感染拡大した新型コロナウイルスが大きく関係しています。多くの企業がテレワークを進める中、書面上のやり取りが必要な「押印」は、業務の妨げになりうると語られたことから、印鑑の必要性や代替手段が検討されたのがきっかけです。
どんな法律なの?
印鑑廃止にまつわる法律は「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(デジタル社会形成関係法律整備法)」といいます。
押印・書面手続きの見直しのほか、個人情報保護制度の見直しやマイナンバーを活用した行政手続きの効率化などが謳われています。ちなみに、押印見直しがなされたのは、戸籍法を含む22法律です。
いつから適用されるの?
法律案は、既に2021年(令和3)年5月12日の国会で可決・成立しており、2021年9月1日から各種行政手続きおいて適用されています。
押印が不要になった手続きは?
主に、本人確認の必要性が低い手続きや、添付書類等によって本人確認・推定できる手続きに関しては、押印不要になりました。具体的には、以下のような書類が挙げられます。
- 戸籍関連(婚姻届、住所変更届など)
- 税金関連(確定申告書など)
- 保険関連(高年齢雇用継続給付、育児休業給付など)
- その他(就労証明書、施設の使用許可申請書など)
上記は一部であるため、手続きが必要なときに都度確認してみるのが良いでしょう。
- 内閣官房「国会提出法案(第204回通常国会)」
- 内閣官房IT総合戦略室・デジタル改革関連法案準備室・総務省自治行政局「デジタル改革関連法案について」(P24:押印・書面の見直しに係る法改正事項について)
- 内閣官房IT総合戦略室「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(2021年2月9日)」(P4:第七条 戸籍法の改正について)
婚姻届の印鑑への影響は?
次に、押印不要における婚姻届への影響について、詳しく見ていきましょう。先に伝えた通り、ハンコ廃止の法改正は9月1日から各行政で施行されています。そのため、婚姻届内の印鑑は現在不要です。
とはいえ、まだまだ「重要文書に押印すべき」という考えが根強いのも事実。婚姻届の新様式では、押印欄に「任意」と印字され、届出人・証人ともに本人の意向に合わせて任意で押印できるようになっています。つまり、必須ではないが押印しても良いということです。
これらの改正によって,押印義務は廃止されますが,明治以来,戸籍届書には押印することとされ,また,重要な文書に押印してきた我が国の慣習や,婚姻の届出には押印をなくすべきではないとの国民の声などを踏まえ,改正以降も,届出人の意向により,届書に任意に押印することは可能とされております。
出典: 法務省「戸籍届書の様式変更について(令和3年8月)」より引用
- ハンコ廃止は2021年9月から始まっている
- 現在、婚姻届の印鑑は「任意」となっている
任意とは?婚姻届の印鑑でやってはいけないことを役所に聞いてみた
2021年9月以降、押印は任意(押しても押さなくてもOK)となった婚姻届の印鑑ですが「本当にハンコ無しで大丈夫?」「再提出にならないの?」と不安になる人も多いはず。そこで、婚姻届の押印における疑問を解決するために、主要役所(東京都世田谷区役所、大阪府大阪市中央区役所)の担当窓口の方へ問い合わせて確認してみました。
印鑑廃止後の婚姻届の実態を調査すべく「ホントのところどうなの?」という突っ込んだ質問を投げかけてみましたので、ぜひチェックしてください。
印影がにじんでしまった。このまま提出するとどうなる?
氏名の判読ができない印影はNG(にじみ、欠けなど)
押印義務が廃止となった2021年9月以降、良かれと思って押した印影がにじんだり、欠けたりした状態の婚姻届を提出すると、正しく受理されるのでしょうか。区役所の方の回答は次の通りです。
印影のにじみや欠けもOK!婚姻届は受理される!
2021年9月以降、押印は任意になっています。たとえ印影がにじんだり欠けたりしていたとしても、正しく受理されるのでご安心ください。(世田谷区役所戸籍担当)現在押印は任意なので、にじんだり欠けたりしていても問題ありません。ただ、せっかく押印していただけるのであれば、綺麗な方が良いですね。(大阪市中央区役所窓口サービス課)
任意で押した印鑑とはいえ、にじんでしまったり欠けてしまったりすると不安ですよね。しかし、ご安心を。役所の回答は上記の通り「にじんだ印影や欠けた印影がある婚姻届でもOK」とのことですので、そのまま提出しても大丈夫です。
シャチハタやゴム印で押した印影つきの婚姻届は受理されるの?
シャチハタやゴム印は婚姻届には使用不可
押印義務が廃止となった2021年9月以降、任意の押印にシャチハタやゴム印を使用した婚姻届は認められるのでしょうか。
シャチハタやゴム印はNG!
押印が任意とはいえ、シャチハタやゴム印は認められません。押印いただく場合は、朱肉を付けるタイプの印鑑を使用してください。(世田谷区役所戸籍担当)シャチハタやゴム印は「なりすまし」ができるものなので、そもそも法的書類に使用できないものです。押印の際は、必ず朱肉を付ける印鑑を使用してくださいね。(大阪市中央区役所窓口サービス課)
明確には判断が難しいとされたものの、シャチハタやゴム印を押印した婚姻届は、不正な書類とみなされる可能性が高いようです。もし婚姻届に誤ってシャチハタやゴム印で押印してしまった場合は、別の用紙に書き直すことをおすすめします。
ひとりだけ押印している婚姻届はOK?NG?
婚姻する本人2名と、証人2名の印鑑が必要
押印義務が廃止となった2021年9月以降、4名全員の押印がない婚姻届は、正しく受理されるのでしょうか。新郎だけ押印しているケースや、証人2名のうち片方だけが押印しているケースについて伺ってみました。
1人だけ押印していてもOK!役所は自筆署名を見ている
押印は個人の意向にお任せしているので、おひとりだけ押印している婚姻届でも認められます。ただし、4名それぞれ「自筆署名」であることが規則なので、ご注意ください。(世田谷区役所戸籍担当)押印人数は、婚姻届が受理されるかどうかに影響しないのでご安心ください。押印の有無よりも「署名が自筆であるかどうか」が重要です。(大阪市中央区役所窓口サービス課)
印鑑を押すかどうかは婚姻届に署名する4名(夫妻2名と証人2名)それぞれの任意判断なので、一部の人だけ押印していてもOKということでした。例えば証人のうち1人だけ押印している状態で問題ないということですね。一方、役所の窓口での重要チェックポイントは自筆署名であるかどうかということです。
訂正印も廃止?書き間違えたときはどうすれば良い?
訂正は二重線して書き直し、捨印を押印(新しい本籍と届出人の2つの欄は二重線の上に訂正印)
押印義務が廃止になったのであれば、従来間違えた箇所に押印していた「訂正印」はどのようになるのでしょうか。婚姻届の訂正方法や、訂正印の必要性について調査してみました。ちなみに、従来の訂正方法は以下の3ステップでした。
- 書き損じ箇所に二重線を引く
- 余白に正しい内容を書く
- 捨印欄に押印をする(新本籍と署名欄のみ、二重線の上から訂正印の押印が必須)
この訂正のルールは今後どうなるのか聞いてみました。
基本は押印不要!押印しておくと安心
婚姻届の基本的な訂正方法は「①二重線を引く②余白に正しい内容を書く」の2点が守られていれば問題ありません。しかし、提出によって新たに作られるもの(新戸籍や氏の選択)は、意志表示をハッキリさせる必要があるため、訂正印をお願いする可能性があります。(世田谷区役所戸籍担当)訂正するときは、二重線を引いて正しい内容を記入してください。訂正印は不要です。現在は移行期間ということもあり、不安になられる方も多いです。もし不安であれば、押印しておくと、従来の方法に則って受理されるので安心ですよ。(大阪市中央区役所窓口サービス課)
このように原則として訂正印は不要です。しかし、現在は印鑑廃止の移行期間であるため場合によっては訂正印を求められる可能性があるようです。婚姻届を提出する当日は実印や認印などを持参しておくと安心ですね。
捨印は不要?提出後に間違いが発覚した場合はどうなる?
(届出人、証人ともに)捨印は押印しておくのが基本
従来の婚姻届では、提出後に間違いが発覚してもその場で訂正できるよう「捨印欄」が設けられていました。証人2名にも、枠外に捨印を押印してもらうよう依頼しておくのが基本でしたが、2021年9月以降の「捨印」はどう理解すればよいのでしょうか。
届出人、証人ともに捨印は不要!
届出人・証人ともに、捨印不要です。署名欄に本人の自筆署名があれば、その場で訂正してもらうことができます。万が一証人欄に間違いがあったとしても、証人となる人の直筆署名があれば問題ありません。もし入籍日までに日数があるのであれば、一度役所へ事前チェックを受けに来てもらえると安心です。(世田谷区役所戸籍担当)「自筆署名=婚姻の意思表示」としているため、捨印不要で各箇所訂正してもらえます。しかし「新しい本籍や氏の選択」で間違いが発覚した場合は、その場で受け取れない可能性があります。不安であれば、捨印を押印しておくと良いかもしれません。(大阪市中央区役所窓口サービス課)
このように今後は捨印も不要という回答でした。当面は捨印欄も残るため、不安であれば押印しておいても良いでしょう。
未成年の場合はどうする?親の同意にも押印不要?
未成年者の婚姻は親の署名と押印が必要
従来、未成年者の婚姻には【その他】の欄に親の同意(署名・捺印)が必要でした。現在婚姻届には押印不要といわれていますが、未成年の婚姻であっても押印無しで受理されるのでしょうか。
親が自筆した同意の署名は必要だが印鑑は不要!
未成年の方が婚姻する場合、親御様からの「同意します」という一文と署名があれば、正しく受理されます。意思表示がしっかりされているかどうかがポイントなので、押印は不要です。(世田谷区役所戸籍担当)親御様の押印がなくても構いません。ただし、自筆署名と同意文は必要です。父母それぞれ記入してもらうようお願いします。(大阪市中央区役所窓口サービス課)
未成年の婚姻への同意表明に関しても印鑑は不要でした。なお、2022年4月1日の民法改正によって成年年齢が18歳となり、男女ともに18歳以上から婚姻が認められることになりました。このため、今後は親の同意署名そのものが不要となります。詳しくは以下をご覧ください。
2022年4月の民法改正によって親の同意署名は不要に
2022年4月1日の民法改正によって成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられました。同時に、従来は結婚できる最低年齢が男性は18歳、女性は16歳だったものが男女ともに18歳へと統一されました。これを受け、従来は親の同意が必要であった未成年(18歳未満)の婚姻が認められなくなるため、親の同意が必要となるケースはなくなることになります。
なお、例外として民法が改正された2022年4月1日の時点で16歳以上の女性は、18歳未満であっても婚姻が認められるという経過措置が取られています。この対象者は、従来同様、未成年の婚姻とみなされ親の同意署名が必要となります。ただし、このケースにおいても親の署名のみ必要で押印は不要です。
- 成年年齢が18歳へと変更された
- 男女ともに成人である18歳から結婚できる
- 未成年の婚姻が存在しなくなるため親の同意署名は不要
- 経過措置として2022年4月1日時点で16歳以上の女性は結婚できるが、この場合は親の同意署名が必要
婚姻届の印鑑について、今後やってはいけないことはありますか?
最後に、押印義務が廃止になった2021年9月以降、「印鑑に関してこれだけはやっておかなければ、婚姻届が正式に受理されない」という新たなルールや規則があるのかどうか、調査してみました。
押印が任意になったということのみで、新たに設定されたルールは何もありません。自筆署名さえしておいていただければ、何か間違いが見つかったとしてもその場で訂正してもらうことができます。(世田谷区役所戸籍担当)
印鑑に関するルールは、何も無いのでご安心ください。戸籍や住民票などを使用して、必要な情報を正しく記入してもらえれば、婚姻届は受理されます。(大阪市中央区役所窓口サービス課)
押印が任意になったこと以外は特に新しいルールや規則はないようです。印鑑以外は従来通りの自筆署名を守り、必要事項を漏れなく記入するようにしましょう。
2021年9月以降の婚姻届の印鑑廃止の変化点まとめ
ここまで解説してきたとおり、2021年9月1日以降は婚姻届の印鑑はすべて不要(任意で押印してもOK)へと変更となります。区役所の担当者へインタビューした結果を含め、その内容をまとめておきましょう。
上記に加え、次のような点も理解しておくと良いでしょう。
- 任意で押印している人がいてもOK
- にじみや欠けの印影があってもOK
- シャチハタやゴム印は変わらずNG
- 婚姻届を提出するときは印鑑を持参する(念のため)
印鑑廃止の影響で戸惑う方も多いと思いますので、ぜひこのまとめを参考にしてくださいね。
婚姻届もオンライン手続きになる?今後の展開とは
ハンコ廃止の流れに加え、2020年10月以降、婚姻届のオンライン化がささやかれています。導入した場合の本人確認は、マイナポータルなど各種サイトを通じて、電子署名や電子証明書で行う予定で検討されているようです。
戸籍関係のオンライン手続きは、2004年4月以降、制度上可能になっているようですが、2021年10月現在、婚姻届をオンラインで届け出する方法を採用している市区町村はありません。将来オンライン化が実現する可能性はあると思われますが、現時点では婚姻届の無断提出やセキュリティトラブルなどの問題に対する解決策が決まっていないため、本格的な始動はまだ先になりそうですね。
参考:日本経済新聞「婚姻・離婚届の押印廃止検討 手続きオンライン化推進」
ハンコ廃止でも結婚したら新姓の印鑑は作っておこう
2021年9月以降、デジタル化に伴う押印廃止がスタートとなりましたが、世の中の全制度で取り組まれている訳ではありません。印鑑が必要となる手続きも依然として残ります。
- 印鑑届の提出
- 相続税申告
- 納税の猶予の申請
- 不動産登記の申請
- 口座振替による納付の申出 など
参考:内閣府「押印を存続する手続(2021年3月31日)」
上記のように、今もなお押印が必要な書類はたくさんあります。実生活でも印鑑が必要な手続きが残りますので、結婚したら新姓の印鑑を作っておくのが良いでしょう。
印鑑にちなんだ結婚の記念品
さて、この最後のパートでは印鑑にちなんだ結婚記念品をご紹介します。婚姻届に印鑑は不要とはいえ、結婚後に印鑑が必要になるシーンはたくさんあります。また、廃止されるからこそ印鑑文化が残っているうちに記念品を購入しておくのも良いかもしれません。
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「1分で振り返る」この記事のまとめ
今回は、ハンコ廃止の法改正に伴う婚姻届への影響について紹介しました。最後に、記事の冒頭でもご紹介した婚姻届と印鑑の今後について再度確認しておきましょう。
- 2021年9月1日から婚姻届のすべての押印は不要
- 届出人と証人それぞれの自筆署名が大切
- 間違えた箇所によっては訂正印が求められるケースがある
- 印鑑廃止が進んでいても新姓印は作っておこう
ハンコ廃止の法改正によって戸惑うこともありますが、結婚に対するふたりの意思表示がされているかどうかが一番大切です。もし手続きに不安があれば、予め役所でチェックを受けておくのが安心ですよ。ふたりの入籍がスムーズに行えるよう、しっかり準備しておきましょう。
印鑑廃止の最新ルールを理解したら、いよいよ婚姻届の記入に取り掛かりましょう。婚姻届のルールや書き方を詳しく知りたい方は【見本&記入例】婚姻届の書き方マニュアル!入籍の必要書類と流れを解説をぜひご覧ください。