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結婚式で音楽を流したら著作権違反になる?
「晴れの結婚式でお気に入りの音楽を流したい!」「結婚式で音楽を流すのはプライベートなものなので、営利目的ではないのでは?」と思われる方も多いと思います。たしかに、もっともな意見です。現実として、営利目的で結婚式を開いている人などいないですよね。実は、結婚式で無断で音楽を流すことが著作権違反かどうかについては「私的利用かどうか」という解釈が重要なポイントになります。
私的利用と著作権の関係
現在の著作権法に対して、50人以上の大人数を招いての会場で使用する場合や、ご祝儀を受け取る形の披露宴での使用は「私用目的」の範囲を越えると一般解釈されています。したがって、適切な権利申請をせずに披露宴で音楽を流した場合、法律違反とみなされる可能性が高いと言えます。
結婚式をプライベートな空間と感じるかどうかはひとそれぞれの感覚ですが、法解釈としては私的利用を超えると解釈される可能性が高く、無断で音楽を流すことは禁じられているということを知っておきましょう。
違反すると1,000万円の罰金?
もしも著作権法違反となってしまった場合、法律では10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金とされています。
著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金などが定めれれています。
出典:公益社団法人著作権情報センター
罰金1,000万円はとても恐ろしいですよね。とてもじゃないですが簡単には支払えません。このような著作権法に抵触しないためには、披露宴のBGMやプロフィールムービー内で使う音楽に対して、適切な利用手続きを徹底する必要があります。
そもそも「著作権」ってどんな権利?
著作権法違反の怖さが分かったところで、音楽にまつわる著作権について具体的に解説していきます。作詞家や作曲家、演奏者など、その楽曲ができるまでに関わる音楽家は、その楽曲が利用されることで生じる著作権料を収入として得ています。
音楽はもちろん聴く人を楽しませるためのものですが、アーティストが時間と手間をかけて作り上げた1つの商品でもあります。当然、アーティストには、自分が制作した商品から対価を得る権利がありますよね。
そういったアーティストと私達の間を取り持ち、音楽の使用に関する手続きを管理するために世の中にはいくつかの著作権管理団体が存在しています。JASRACやNexTone、ブライダル関連ではISUM(アイサム)などの団体がありますので、詳しくは後ほど説明します。
続いては結婚式と音楽にまつわる著作権について見ていきましょう。
著作権と著作隣接権
著作権は、大きく分けて「楽曲をつくった人」と「楽曲を演奏・放送する人」に認められた権利です。
著作権 | 作曲家・作詞家にある権利(楽曲そのものを作った人の権利) |
著作隣接権 | 実演家(歌手など)、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利(作った楽曲を演奏する人の権利) |
上図にあるように、結婚式で音楽を利用する場合、著作権者(音楽を作った人)だけではなく、著作隣接権を保有する歌手やレコード会社の許可を得る必要があります。著作隣接権については上図のように日本レコード協会が管理しています。
少し複雑に見えますが、後ほど説明するISUMを通じて利用申請すればJASRACと日本レコード協会の両方への申請を一括して行うことが可能です。
ここで知っておきたいポイントは、著作権を保有する作曲家が「この曲使っていいよ!」と言っても、著作隣接権を保有するレコード会社が「ダメ!」というと、残念ならがその楽曲を使うことはできないということです。
つまり、結婚式で楽曲を使用するためには「著作権者」「著作隣接権者」の両者に対して申請を行い、許諾を得て権利料を支払う必要があるのです。この両者に対する申請を一括してくれるのが後ほど説明するISUMということになります。
豆知識:古い楽曲は著作権がないって本当?
余談ですが「クラシックなどの古い楽曲は著作権フリーだ」という話を耳にしたことがありませんか?これは本当なのでしょうか?
そんなことは決してなく、古い音楽であれば結婚式でも使い放題!!というわけではありません。作曲者の死後50年を超えた場合は、著作権法上保護される期間が切れるので自由に演奏することができます。
ただし、BGMとして使用する場合、演奏者とレコード会社に支払う権利料著作隣接権料が必要になります。したがって「古い楽曲は著作権フリーである」というのは誤りです。たとえ古い楽曲であっても、巷の噂を鵜呑みにせず、権利関係をしっかりと調べるようにしてください。
少し話が逸れました。ここからは結婚式で大切になってくる2つの権利について具体的に説明していきます。
結婚式で手続きが必要なのは演奏権と複製権
著作権・著作隣接権に含まれている権利は、公表権や譲渡権、二次著作物の利用権等、実に数十以上の権利が存在します。ここでは結婚式で音楽を使用する際に主に知っておくべき「演奏権」と「複製権」についてご説明します。
※著作権全般について詳しく知りたい人は公益社団法人著作権情報センターのホームページを確認してみてください。
演奏権とは?
演奏権とは「楽曲を演奏したり、会場で流す時に発生する権利」です。入場や退場のシーンで、購入したCDの音源を流す場合にはあらかじめ演奏権の手続きを行う必要があります。
演奏権という言葉からは「生演奏する場合に発生する権利」と誤解しがちですが、CD音源などを会場で再生する際も該当します。「演奏権の手続き、大変そう…」と思った方、ご安心ください。ほとんどの結婚式場では演奏権について管理団体と音楽利用に関する契約(例:JASRACとの包括的利用許諾契約)を結んでいます。
その場合、演奏権の申請は式場がしてくれるはずです。プランナーの方へ確認してみましょう。披露宴の余興でカラオケを歌うシーンを見かけることがあるかと思いますが、あの楽曲も実はきちんと使用許可を得て流されているのです。 演奏権についてまとめるとたいていの結婚式場ではJASRACと提携しており、演奏権をカバーしている(挙式料金に含まれている)ことが多いため、個別に頭を悩ます必要はほとんどないかと思います。(ただし結婚式場には必ずJASRACとの提携有無を確認しておいてください)
複製権とは?
続いては複製権についてです。著作権関連で新郎新婦のお二人が直接考えなければならないことが多いのが複製権です。複製権とは、CDなどから音源を複製をする際に発生する権利です。
購入したCDから音源データをコピー(複製)してプロフィールムービーやエンドロールなど、音楽をBGMとして使用する場合には複製権の使用申請が必要です。この複製権については、結婚式場では権利者との契約を結んでいない場合も多いので要注意です。
プロフィールムービーやエンドロールなどを作成する場合は、自分自身で著作権の申請を行う必要があります。また、制作会社などに結婚式ムービーを外注する場合は、複製権の利用申請を代行してくれる業者もありますので、注文する前に確認するようにしましょう。複製権についてまとめると、自作・外注を問わず音楽を使用して結婚式ムービーを制作する場合は複製権に注意!ということを覚えておいてください。
著作権の申請方法と気になる費用
ここまで著作権に関する基本を解説してきました。
「権利については理解したけど、実際に何をどうすればいいの??個人で契約するの?」と思われる方も多いかと思います。いち個人が、作曲家や歌手、レコード会社などと演奏権や複製権の利用契約を交わすのは、とても大変で現実的ではありません。そのために、このような音楽に関する著作権の管理を一括で行う団体があります。
JASRAC(ジャスラック)
日本国内の多くの楽曲はJASRACという団体で一括管理されています。結婚式場含め、楽曲を使用する施設や団体はあらかじめJASRACと契約を結んでいることがほとんどです。JASRAC以外では、主に著作権管理事業を営む株式会社NexToneがあります。
NexToneは、2000年にエイベックスなど音楽関連の事業者を中心に設立された株式会社イーライセンスと、同年に設立された著作権管理事業者である株式会社ジャパン・ライツ・クリアランスが2016年に合併・事業統合して設立された会社です。
2020年現在、日本国内の音楽に関する著作権は主にJASRACとNeToneの2団体が中心となって管理されています。結婚式場を含め、楽曲を使用する施設や団体はJASRACやNexToneと契約を結んでいることがほとんどですので、会場で音楽を流したい場合は、プランナーの方に確認するようにしてください。
ISUM(アイサム)
ブライダルに特化した著作権の管理団体として、2014年にサービスを開始しました。結婚式でプロフィールムービーを上映する場合は、複製権の申請が必要となりますが、その手続を一括して依頼することができる、結婚式用の権利団体です。
結婚式で利用される市販CD音源の著作権・著作隣接権の権利処理と権利料の支払処理をオンライン上で簡単に出来るシステムを提供し、ブライダル業界の関係者が適法に楽曲を利用出来る環境を創ることによって、ブライダル業界と音楽業界の間に「ウィン・ウィンの関係を構築する」ことを目的として設立されたのが「一般社団法人音楽特定利用促進機構」(英語表記:Initiative for Special Uses of Music略称:ISUM=アイサム)です。 ブライダル業界において楽曲が適法に利用されることによって著名アーティストの楽曲が幅広く使われ、結婚式が一層華やかな場になることに寄与すると共に、著作権・著作隣接権の啓発活動の一翼を担うことを本機構は目指して参ります。
出典:ISUM公式ホームページ「ISUMについて」
例えばプロフィールムービー用に音楽を3曲使用する場合、各楽曲のレコード会社がどこなのかを調べて、一曲一曲申請するのは大変ですよね。これを一括管理しているのがISUMです。
ISUMに申請をすれば、新郎新婦に代わり著作権に関する手続きを行ってくれます。ただし、ISUMへ著作権の利用申請をすることができるのは登録事業者(結婚式場や結婚式ムービーの制作会社)に限られ、原則として個人が直接ISUMへ申請することはできません。(2020年7月現在)
ISUMはブライダル事業者様のお手続き(利用申請)を代行する団体のため、個人のお客様からは直接お受けできません。個人のお客様は、ご利用になられる式場・ホテル等を通してISUMでお手続きをお願いします。
出典:ISUM公式ホームページ「よくある質問」
ISUMで申請した場合の料金相場
ISUM(アイサム)を通じて複製権の申請を行う場合、どれくらいの料金がかかるのでしょうか。結婚式場やムービー制作会社のようなブライダル関連事業者が申請する際の利用料金をまとめておきます。
著作権使用料 | 400円〜5,000円/曲(JASRAC) |
著作隣接権使用料 | 2,000円〜/曲×DVD枚数(日本レコード協会) |
システム利用料 | 上記合計の8%(ISUM) |
※上記はJASRAC管理楽曲の場合(2020年7月現在)
たとえば、プロフィールムービーに3曲の音源を使用した場合の計算方法の例は、
- 著作権使用料:400円×3曲=1,200円
- 著作隣接権使用料:2,000円×3曲=6,000円
- ISUMシステム利用料:(1,200円+6,000円)×8%=576円
合計すると7,776円(1,200円+6,000円+576円)ほどの料金となります。
楽曲によって各権利の使用料金が異なりますので、あくまで参考としてご覧ください。また上記は結婚式場やムービー制作会社などのブライダル事業者向けの料金です。
ブライダル事業者が申請代行を行う際は一般的には手数料が加算されますので、個人の方への請求料金は上記よりも少し高くなることを理解しておくと良いでしょう。
手続きや料金については結婚式場の担当プランナーやムービー制作会社(映像演出で楽曲を使用する場合)の担当者とよく相談の上で正しく申請しすることがポイントです。ISUMの料金相場についてさらに詳しく知りたいという方はISUM公式ホームページ「著作権料について(事業者向け)」も合わせてご覧ください。
ISUM申請を代行してくれるムービー制作会社と料金まとめ
ここまで説明してきたように、結婚式における音楽の利用には著作権関連の申請と利用料の支払いが必要です。
披露宴でのBGMなどは結婚式場を通じて利用料を支払うことが大半ですが、披露宴で上映するムービーについては必ずしもそうとは限りません。特に、プロフィールムービーやオープニングムービーを結婚式場以外の専門業者に外注して持ち込む場合は、ムービー制作会社を通じてISUM申請を行うケースが多いようです。
そこで、ここではISUM申請を代行してくれる主なムービー制作会社と各社の料金をまとめてご紹介します。
ムービー制作会社 | 料金(税別) |
Favio | 3,200円/曲 |
ハッピームービーズ | 4,500円/曲 |
プリンセスネット | 4,500円/曲 |
ナナイロウェディング | 4,800円/曲 |
chou chou | 3,500〜6,500円/曲 |
各社ばらつきはありますが1曲あたり5,000円以内を目安とすると良いかと思います。なお、制作会社によっては上記の金額とは別に楽曲変更のために1曲あたり1,000〜2,000円の編集料が加算される場合がありますのでご注意ください。
ナナイロウェディングのISUM申請代行サービスでは変更手数料などは一切含まず、1曲あたり4,800円とわかりやすい料金形態となっています。
なお、ナナイロウェディングでは0円で使える楽曲リストをご用意していますのでぜひ試聴してみてくださいね。(ナナイロウェディングでムービーをご注文のお客様はお好きな楽曲をご使用いただけます)
どうしても著作権料を払いたくない場合
ここまで結婚式と音楽にまつわる著作権について解説してきました。最後に、どうしても著作権料を支払いたくない場合の対応方法について見ていきます。
方法1.映像と音楽を別々に再生する
プロフィールムービーを上映する際に、音楽の入っていない無音のムービーと流したい音楽を別で持ち込み、再生するときに、オペレーターが「映像」と「音楽」を別々に同時再生する方法があります。
先ほど説明したように多くの結婚式場ではJASRACと提携(包括的利用許諾契約)していることが多く、そういった式場では市販CDを再生する(演奏する)許諾を得ています。
そのため、無音のプロフィールムービーの上映に合わせて許諾を得た楽曲をCDで再生すれば、許諾の範囲内での使用ということになります。この場合、プロフィールムービーを制作するときに発生する「複製権」に触れることがないので、ISUM(アイサム)へ支払う費用の節約ができます。
式場によってはそのような対応をしてくれるところもありますので、くわしくはプランナーに相談してみるとよいでしょう。この方法を使えるかどうかは、結婚式場とJASRACとの間に該当する契約が結ばれているかどうか次第ということになります。
方法2.著作権フリーの楽曲を探して使用する
「絶対にこのシーンにこの曲を使いたい!!」という強い要望がなければ、著作権フリーの楽曲を使うのもおすすめです。ネット上での無料ダウンロードまたは購入が可能で、著作権料を支払わずに使用することができます。
(1)インターネットで著作権フリーの楽曲をさがす
インターネットからダウンロードすることができます。楽曲の中には、アマチュア作品も含まれていますので、使用しているシンセサイザーの音質とクオリティが落ちる場合もありますが、ハイクオリティの楽曲もあります。上手く使えば充分会場を盛り上げることができるでしょう。
ただし、著作権料の支払いは不要なものの申請が必要なケースや使用期間が限られているケースがあるので、利用規約をしっかりチェックして自己責任で活用するようにしてください。
(2)iTunesで著作権フリーの楽曲を探す
iTunesで「著作権フリー」または「Royalty free」で検索すると、単曲でダウンロードまたは購入できる楽曲があります。購入料金に著作権料が含まれているので、期間内は自由に何度でも使用できます。有料楽曲の方が比較的クオリティが高いですが、1度の結婚式のみの使用であれば著作権団体に申請する料金の方が安くなる場合もありますので注意してください。
まとめ
楽曲や使用方法によって申請の仕方も変わってきます。権利のルールは複雑で、式場側でも正しい判断をしかねるケースがあるので、不安なことや分からないことがあれば、管理団体に直接問い合わせてみるのが一番です。
一生に一度の結婚式。晴れ晴れとした気持ちで当日を迎えられるように、しっかりと手続きを踏んだうえで楽曲を使用しましょうね!
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