結婚が決まり、両家での顔合わせに向けて準備を始めた方のなかには、「席順の決め方やマナーってどうしたら良いんだろう?」と困っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなお悩みを解決すべく、両家顔合わせでの「席順の決め方」「上座・下座の基礎知識」をご紹介していきます。おすすめの座り方について図解もしていますので、ぜひ参考にしてください。
顔合わせ食事会の席順の3つの決め方
「両家顔合わせ」と聞くと、堅苦しいイメージを持つ方も多いと思います。しかし実は、結納などと異なり、伝統的なルールはありません。比較的カジュアルで、リラックスした雰囲気でおこなうものですので、安心してください。
とは言え、ご両家で納得しやすい席順もあります。ここでは、席順の決め方を3つご紹介します。
席順の決め方1.一般的な慣習にならって決める
慣習にならって決める場合には、新郎側が【上座】、新婦側が【下座】が一般的です。ご両親によっては、席次の知識があり、上座・下座を気にされる方もいらっしゃると思います。一般的な慣習にならうことで両家の納得感も得やすい席順となります。両家での座り方は上座から、父→母→子の順番が一般的です。
ただし、顔合わせ会場のレイアウトによっては、上座・下座が判断しにくい場合もあります。具体的な座り方については、次のパートで図解します。
席順の決め方2.自由に決める
一般的な慣習はあるものの、顔合わせには伝統的なルールはありません。新郎新婦を中心に自由に決めるという方法も、席順の決め方のひとつです。
例えば、「両親の間に子が座る」というパターンもあります。このパターンは子が間に座ることで、お父様同士・お母様同士の会話を新郎新婦で無理なく盛り上げることができます。ご両親にとっても新郎新婦との距離が近いので、話しやすい席順です。このように顔合わせ当日に話が盛り上がりやすいように席順を決めるという方法も、ひとつの選択肢です。
席順の決め方3.お店の人に相談して決める
実は、お店の方に相談して席順を決める方法もあります。顔合わせの食事会がよく行われる会場であれば、お店の方の意見は参考になることが多いです。お店によっては、景色の良さ、料理が運ばれてくる動線など、配慮すべきポイントがあることも多いのです。お店の経験則を参考にしつつ、一般的な慣習をうまく取り入れながら考えてみることもおすすめです。
以上のように、顔合わせの席順を決めるためには3つの方法があることをご紹介しましたが、「決め方は分かったけど、実際のレイアウトでは、誰がどこに座るのが良いんだろう?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。そこで続いては、顔合わせでおすすめの座り方を図解して解説していきます。
顔合わせでおすすめの座り方5選
このパートでは顔合わせ食事会でおすすめの具体的な座り方をご紹介します。
伝統的な慣習を重視した【慣習型の座り方】を3つ、食事会が盛り上がることを重視した【自由型の座り方】を2つ、合計5パターンを取り上げます。実際に食事会を行うお店のレイアウトをイメージしながらご覧ください。
座り方1.【慣習型】両親+新郎新婦で四角いテーブル
はじめにご紹介するのは最もオーソドックスなパターンです。新郎父が上座に、新郎と新婦が下座に座ります。「結婚とは男性の家に女性が嫁ぐもの」という伝統的な価値観が反映されているため、日本人の多くには受け入れられやすい形式です。また、入り口近くに新郎新婦が座るため、お店の人へのオーダーを取り次ぎやすい点もこの座り方のメリットです。
ただし、そうした伝統的な価値観に異論がある両親の場合は不向きですのでご注意ください。
座り方2.【慣習型】両親+新郎新婦で丸テーブル
円卓の食事では最もオーソドックスなパターンとなります。全員の顔が見渡しやすい円卓の利点を活かしつつ、上座と下座の考え方も取り入れた座り方です。座っている本人たちにとっては四角いテーブルほど上座と下座を意識しなくて済むため、リラックスした雰囲気になりやすいのが特長です。
座り方3.【慣習型】両親+兄弟姉妹+新郎新婦で四角いテーブル
兄弟姉妹が同席する食事会に用いやすい座り方がこちらです。座り方1をベースに母親と新郎新婦の間に兄弟姉妹が座るパターンで、兄弟姉妹が年上か年下かに関わらず、下座は新郎新婦の二人にする点がポイントです。兄弟姉妹に家族がいる場合は、もちろんそれぞれの隣に家族が座ります。
なお、ご両親に加えて兄弟姉妹が同席する場合は参加者が7名以上となるため、お互いの席が離れてしまう円卓は不向きといえます。四角いテーブルの会場を選びましょう。
座り方4.【自由型】両親+新郎新婦で四角または丸いテーブル
両親と新郎新婦のみの食事会で、伝統的な慣習にとらわれない自由な座り方の例がこちら。中央に新郎と新婦が座り、その左右を両親で挟むパターンです。子が中心となって両親に話題を振り、食事を盛り上げていくことができるというメリットがあります。顔合わせを「新郎新婦が両親を紹介する場」と捉える場合はこの座り方もおすすめです。
座り方5.【自由型】両親+兄弟姉妹+新郎新婦で四角いテーブル
四角いテーブルの中央に両親が座り、左右を兄弟姉妹と本人で固めるパターンです。中央の両親から左右の家族へ話題を振りやすく、両親を会話の中心に据えやすいメリットがあります。両親と相手方の兄弟姉妹との会話がスムーズになるメリットがある反面、兄弟姉妹が上座となるため、上座の考え方に厳格な両親の場合は不向きと言えます。
以上が顔合わせ食事会におすすめの席順5パターンです。ここまでのポイントをおさらいしておきましょう。
- 慣習型と自由型どちらにするか決める
- テーブルの形状(四角or丸)を考慮する
- 出席者の人数(兄弟姉妹)を考慮する
- 話が盛り上がりやすいように配慮する
続いては、上座と下座の由来や歴史、そもそもなぜ席次が重視されているのか?といった基礎知識について解説します。
上座と下座、新郎家と新婦家の順番は?
ここまで、席順の決め方や座り方の例についてご紹介してきましたが、「そもそも上座・下座ってなんなの?」と思われている方も少なくないでしょう。ここからは、そうした席次の基礎知識や、なぜ新郎側が上座とされているのかといった慣習についてご紹介したいと思います。
上座と下座の基礎知識
まずは、上座と下座の由来、席次を重視することの目的や効果を見ていきましょう。
上座・下座の由来
由来については諸説ありますが、室町時代(1336年~)に「書院造」という住宅様式が誕生したことが関係しているといわれます。武士中心の世の中になったことで、交渉や接客の場が必要になりました。身分の高い人間が上段の間に座り、それよりも一段低く作られた下段の間に家臣や身分の低い人間が座ることによって、身分の差を明確にしたことが始まりとされています。
上座・下座による効果
現代でも、上座にはおもてなしをされる相手が、下座にはおもてなしをする立場の人間が座ることが基本です。下座は出入口に近いことが多いため、場合によってはおもてしの準備をする立ち回りになります。上座・下座を基準に座ることで、慣習を重んじる相手であろうとなかろうと、目上の方に対して手間を取らせず、失礼のない振る舞いでもてなすことができるのです。
和室やお座敷で特有の上座・下座の考え方
和室やお座敷のお店で顔合わせの食事会をおこなう場合、床の間を起点に上座を考えます。床の間は、現代でもそうであるように、古くから掛け軸や花を飾る場とされていました。身分の高い人が訪れた際にはおもてなしの場として使われたため、その床の間を基準に、最も近い位置を上座、最も遠い位置を下座としたことが理由とされています。
このように、【床の間】=【おもてなしの場】という考えは現代まで継承されており、いまでも和室やお座敷では床の間の前が上座という考え方が一般的です。
新郎家と新婦家の順番は大切なのか?
結婚式では一般的に新郎側が上座、新婦側が下座になっていますが、これはなぜなのでしょうか。
歴史を紐解くと、結婚の文化が生まれたのは奈良時代頃とされています。当時は意外にも「男性を女性側の家族に迎え入れる」という考え方でした。しかし、武士が台頭する時代になってからは、男性優位の世の中に変わっていきます。武士たちが結婚を理由に土地を離れられなかったことも相まって、「女性が男性の家に入る」という形が一般的になりました。この名残から、今でも男性優位の考え方が残っているとされています。
とは言え、これはあくまでも慣習ですので、必ず守らなければいけないということはありません。両家の顔合わせでは、話しやすさや会場のレイアウト等に合わせて一番ベストな席順を考えることが大切です。
- 由来は武士の社会の身分制度
- 上座・下座を意識するとおもてなしがスムーズ
- 和室や座敷では床の間(おもてなしの場)の前が上座
- 新郎家が上座、新婦家が下座という通念がある
顔合わせ食事会の座る場所に関するよくある質問
このパートでは、両家の顔合わせ食事会の座る場所に関して新郎新婦のみなさんが疑問に思うポイントを、よくある質問としてまとめてご紹介します。今回は礼儀作法やマナーに詳しいNPO法人日本サービスマナー協会の浜村百里香さんにお話を伺いました。
Q.座る位置は両親や兄弟にいつどのように伝えればよいの?
A.基本的には当日お伝えします。主役である新郎新婦が家族一人ひとりの座る位置を示して誘導しましょう。会場を事前に下見して座り位置を確認しておくとスムーズです。また、席次表やしおりを手作りして用意しておくと温かい雰囲気で進める事ができるでしょう。
Q.想定していた席順に座ってもらえなかったらどうしたらいいの?
A.参加者に和やかに気持ちよく交流してもらうことが大切なので、予め決めていた席順に必ずしもこだわる必要はございません。ただし、参加者全員が気持ちよく過ごしていただけるよう、最初に新郎新婦が責任を持ってしっかりと席順を誘導しましょう。
Q.座る位置は食事会の途中で変えてもいいの?
A.もちろん問題ございません。顔合わせ食事会は両家の紹介と同時に、お互いの家族がこれから親族関係を結ぶ前の親睦を深める場としての意味合いもあります。場が和やかに盛り上がるようであれば食事の後半で席を変わってお酌をするのもおすすめです。
Q.両家の人数バランスが合わない場合、座り方はどうしたらいいの?
A.四角いテーブルの場合、両家が対面し、両家両親と新郎新婦は必ず対面に座るのが基本です。両家の人数差が1〜2名であれば問題ありませんが、それ以上の人数差がある場合は兄弟姉妹に対面側に座ってもらうなどしてバランスを取ると良いでしょう。
Q.片親の場合は席順はどうしたらいいの?
A.どちらかの家が片親の場合でもこの記事の冒頭部分で紹介した座り位置が基本となります。四角いテーブルの場合は相手のご両親の間に対面して座るとよいでしょう。丸テーブルの場合は、出席する片親がこの記事で紹介した図の父親の位置に座ります。
Q.祖父母がいる場合は席順はどうしたらいいの?
A.祖父母の座り位置は、両親よりは下座側、兄弟姉妹よりは上座側です。両家顔合わせの席次の最上位は主役の新郎新婦にとって一親等であるご両親にするのが基本です。
Q.顔合わせが盛り上がるように工夫できることはありますか?
A.顔合わせまでにお時間に余裕があるようであれば、手作りのしおりを用意すると話題が豊富になることでしょう。しおりにはお互いの家族の情報やお二人のこれまでの写真などを載せると会話が盛り上がると思います。食事会に参加する親や兄弟姉妹のプロフィールなどをお互いの家族に事前共有しておくと、話題づくりや会話のきっかけになるのでおすすめです。
顔合わせのしおりに関して詳しくは【顔合わせのしおり作成ガイド】無料テンプレートを使った作り方やアイデアを紹介!をご覧ください。
いかがでしたか?顔合わせ食事会の席順や座り方に関して感じた疑問を解消いただけたでしょうか?最後に、これから両家顔合わせ食事会を控える新郎新婦へ浜村さんからメッセージをいただきましたのでご紹介します。
コロナ禍での両家顔合わせは、開催時期の調整なども含め、ご両親のご意向を優先するなど更にお心遣いが大切です。マナーの原点は、相手の身になって考える優しさと思いやりを形にして伝えることなので、両家の参加者が和やかで心地良く過ごしていただけるよう、主役である新郎新婦はしっかりと準備をしましょう。
NPO法人 日本サービスマナー協会
認定講師 浜村百里香
「1分で振り返る」この記事のまとめ
この記事では、両家顔合わせでの「席順の決め方」「上座・下座の基礎知識」についてご紹介してきました。改めてポイントを確認しましょう。
席順の決め方は3つある!
一般的な上座・下座にならって決める方法もありますが、自由に決めたり、お店の方のアドバイスを参考にしたりする方法もあります。両家にとってベストな席順が決められる方法を採用しましょう。おすすめの座り方は図解してご紹介しました。
上座・下座には歴史が関係している!
武家社会だった日本にとって、上下関係をはっきりさせ、相手をもてなすことは重要な慣習でした。「床の間」をおもてなしの場としていたことから、現代でも和室やお座敷の場合には床の間を基準に上座・下座を考えます。
慣習はあくまでも基準!
慣習を重視するかどうかは、人によって異なります。気にしすぎて顔合わせがぎくしゃくするようでは本末転倒です。必要に応じて両家のご両親に相談しながら、どんな席順がベストなのかを、新郎新婦お二人で考えてみることが一番大切です。
顔合わせは緊張されると思いますが、お二人の門出となるおめでたい日でもあります。ご家族もきっと楽しみにされていることと思いますので、当日は肩の力を抜いて、リラックスして楽しんでくださいね。
この記事で顔合わせの席順や座り方をチェックした上で「顔合わせ食事会の全体の流れを知りたい!」という方は顔合わせを成功させる流れと進め方!手土産や服装、席順の注意点とは?もぜひご覧ください。